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僕ら× 1st.

第12章 夏鍋パ --Hzm

あれからもうすぐ2年。
海外の大学に通いだした俺は、夏冬の長期休暇のたびに帰ってきては、自宅でのんびり過ごしていた。

雨上がりの今夕は、妹たちのコンサート。

去年秋に妹とリィがつきあいだしたと兄貴に聞いて以来、2人でいる姿を見るのは今日が2度目になる。

1度目は、今年の正月。
からかうと、はにかむリィだったけど、2人の関係はつきあう前と大差ない様子だった。

あれから半年以上が経ち、変化したんだろうな……。

少し早めに会場に着いた兄貴と俺は、空いた席に座って今かとステージの様子をうかがう。

2人が裾から出てくるところから拍手が鳴りだす。
お辞儀のあと、ピアノとドラム各ポジションへ。
その後、背をピンと伸ばした女のコがゆったり入ってきて深くお辞儀をした。

拍手が鳴り止むと、リィのドラムが静かなさざ波のように鳴りだす。
あわせて妹の前奏。

ボーカルのコが伸び伸びと歌いだす。
悪い緊張はしないんだな。
低めに甘い、いい声だ。
それに、装飾の少ない潔いドレスもムードを更に引きたてている。

プログラムの3曲は、どれも誰もが1度は聞いたものばかり。

なかでも"Fly Me to the Moon"は俺の大好きな曲。

ハニィはリィに連れていってもらえるな。

俺はというと、未だ誰と手をつなぐか定まってはいない。
フラフラするのが性にあっている様だ。

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