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僕ら× 1st.

第12章 夏鍋パ --Hzm

つい先日、金賞をとったコンクールの課題曲だという吹奏楽曲がステージから流れはじめたちょうどそのとき、妹が歌姫とやって来た。
遅いと思ったら、着替えてたのか。

ワンピースだった妹は、Tシャツとキュロットになっていた。

「お兄ちゃん!来てくれてありがとう!」

パタパタ駆けてきて、俺の前でニッコリ止まる。
妹の頭を撫でる俺も、自然に笑顔になる。

「おー、がんばってたな」

妹の後方からやってきた男が、戸惑うように挨拶してくる。

「お兄さんですか?顧問の根岸です」

「あ、お世話になっています。花野の兄です」

まったく鍛えてない身体だ…。
タッパあるから、筋肉つければ見映えよくなりそうなのに。
それに、なぜか怯えてる?

「こんばんは、根岸先生」

「あ、その折はどうも」

兄貴が挨拶すると、顧問は恐縮気味に頭をさげた。

「お兄ちゃん、こちらが桃湖だよー。いい声でしょ?桃湖、この2人が私のお兄ちゃんだよっ」

と歌姫を紹介する。
勝ち気っぽく美人過ぎない美人は、にこやかにお辞儀した。

歌姫は「彼氏が来てるから、またね」と言って、妹に手を振って人混みに紛れていった。

「じゃ、俺は吹奏楽部の第2部が始まってるから行ってくるな。お前ら、気をつけて早く帰れよ。明日の撤収作業、忘れんな?…では、失礼します」

俺と兄貴に頭をさげた顧問は、そさくさとその場を立ち去った。

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