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僕ら× 1st.

第2章 バンド始動 --Ior,Kn

僕はただ、放課後に彼女と楽しく過ごす場所があればいいのだから。

「もちろん。部屋借りていいの?」

「他の先生に話つけておく。そのかわり、顧問になる俺の言うこと聞けよ?」

先生は、僕と彼女の顔を交互に見る。

「聞くよ?」

「お前は自分が必要と感じなければ、なかなか覆さないらしいじゃないか。ま、それはいいことでもあるけどな。宮石は、俺、担任じゃないからよく知らないけど、小学校では授業中にも関わらずピアノ弾きまくってたってな?」

「よくご存じですねっ。私、ソナタの練習ばっかりしてたんです」

問題児的なマイナス印象を持たれているにも関わらず、彼女はニコッと答える。
無邪気な笑顔を向けられて、先生から毒が抜けるのを感じた。
このコはこういうコ、あきらめにも近いが、相手にそう思わせたら彼女の天然勝ちだ。

「…君らのご両親は、残念なことだったな。まだあれから2年だし、大変なこともあるだろうけど、がんばって生きろよ?」

「はいっ」

「じゃ、俺は速水部長と話があるから、宮石は先に帰って」

彼女は、"そうなの?"と不安そうな表情を浮かべるけど、僕がニッコリすると、コクンとうなずいた。

「根岸先生、どうもありがとうございます。これからもよろしくお願いしますっ。失礼します」

彼女が立ちあがり深々と頭をさげると、先生は片手をあげた。

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