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僕ら× 1st.

第2章 バンド始動 --Ior,Kn

「なぁ、速水。お前と宮石ってつきあってんの?」

彼女が廊下側からこちらに向かって一礼しているのを見ながら、先生は尋ねてきた。

「違う。幼馴染みだよ」

職員室のドアが静かに閉まると、先生は僕に視線を移す。

「そっか、お前の片想いな」

「勝手に決めんな」

カチンときたが、ここで婚約者だなんて言ったら、部屋を借りられなくなるのは明白。

「ええと、俺は、誰だっけ?」

先生は、僕の言葉使いに少し機嫌を悪くしたらしい。
失礼なことを言ったのはそっちだろ?と言いかけたがぐっとこらえた。
仕方ない、ここはコミカルにシタテに出ようか。

「まだお会いして1週間ですが、大恩ある僕の担任様です。そして、ナントカ同好会の貴重な顧問様です。お世話になります、たいへんに感謝いたします。ありがとう」

「……ま、あの部屋は窓だらけだしな。学生にあるまじき変なことすんなよ?許可を出した俺までくらうからな?」

苦笑しながら、先生は僕に釘を刺す。
そんなの十二分にわかってる。
まったく大人ってやつは、お決まりだな。
適当にあしらっておこう。

「はい、先生のスーパーハンサムな美顔に、泥はお塗りいたしません」

「ホントかよ?」

「ハニィに嫌われることは、ぜったいにいたしません」

たとえ先生に泥を大量に浴びせても、彼女には好かれたい。
これがまぎれもない真実だ。

「ハニーって、お前……。でも宮石がお前にほだされたら?」

もう充分なのに、先生はさらに尋ねてくる。
たらればなんて言ってたら、キリがない。
残り1か月でこの星が終わるってなら、僕も行動する。
それでも、彼女に嫌われるようなことはできないだろうけど。

「んー」

「んーじゃないだろ!」

考えるふりをして少しからかってみると、予想した答えが返ってくる。
先生も会話を楽しんでいるようで。

「大丈夫だよ、先生。僕、わきまえてるよ?中学生だもん?よくて、手握ってキスするくらいだよ」

「お前、止まれるのか?」

"ほだされたら?"って先生が聞いたんだろ?
これって明らかに挑発してるよな?

「セックスしたいって叫べばいいの?」

もう、めんどくさいんだから。

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