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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

~本條柊side~

「彩華さん…俺、今日で17になったよ」

冷えた手に、手を重ねる。
指の長い彩華さん、でももうとっくに。
あの頃よりもずっと俺、伸びたんだよ。

乾いた唇にそっと唇を押しつける。

彼女は目を覚まさない。
ピクリとも動かない。

きっと永遠に……。

そんなことない。
俺がここで諦めてどうする?

「好きだよ…」

彼女の上下肢関節を動かす。
毎日やってるけど拘縮気味で、筋肉も痩せ細っている。
尖足も目立ってきて……。

花瓶の花を換えながら俺は1人、話しつづける。

「彩華さん、ヒマワリの花は好き?俺、小さい頃よくアルと種を食べてたんだ。けっこう旨いんだよな」

蝶よ花よと咲き誇る年齢の彼女。
季節は巡り何度も移り変わるのに、この部屋だけ時間が止まったかのよう。

カーテンを開けはなち、俺は部屋をあとにする。

レスピレーターの規則正しく空気を送りこむ音が、非常灯光る早朝の廊下に響いていた。

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