
僕ら× 1st.
第13章 ク"ニコ"ム --Shu
アルを救うため?
伊織はこの状況をわかっている?
女の目から液体がこぼれ、上げていた手がパタッと落ちた。
その黄色く浮腫んだ涙目が、伊織に向けられる。
「大丈夫、僕らが守るよ。貴女に誓う…僕は、速水伊織。知ってる?」
微笑んだ伊織がそう言うと、女はひきつれた目を見開いたように見えた。
「伊織……ごめんね、ありがとう」
声にならない声で、確かに女はそう口を動かして、薄黒く欠けた歯を見せて笑った。
「俺を救うって、あんた誰だよ?」
「アル、無理だよ。もう、息をするのも辛そうだぜ?」
それに伊織は、この場しのぎで言ったんじゃない。
虫の息であるこの女に、自身のアンテナを突き刺しているはずだ。
「わかった。ごめんな。楽にしてやるから」
懐から短剣を取り出す。
「……レ……ぃ……!」
その女は渾身の力を込めて、アルにすがるように抱きついた。
アルの衣服に女の体液が染みていく。
「……まだ頑張れるか?」
アルが優しく声をかけるも、女が動いた拍子にズルッと床に飛び出た内容物に次の句をなくす……。
伊織が横で、手で視界を半分隠しながら体勢をずらす。
もう無理だ。
敷かれた布団に吸われてよくわからなかったけど、出血はリッター単位。
意識だって限界。
「……ゆ…。……ユぅっ…ぁぃたかっ…たぁ…!」
潰れかけたノドからヒューヒューっと息が漏れる。
激しく強く、次第に弱く、また強く細く。
蒼白の伊織がしゃがんで、アルの背中に崩れる。
と、アルの瞳が一瞬大きくなった。
女の全身を一瞥し、目を細める。
「……俺もだよ……母さん。会えて、よかった」
女の後ろに回した凶器を、一息に突き立て引き裂いた。
伊織はこの状況をわかっている?
女の目から液体がこぼれ、上げていた手がパタッと落ちた。
その黄色く浮腫んだ涙目が、伊織に向けられる。
「大丈夫、僕らが守るよ。貴女に誓う…僕は、速水伊織。知ってる?」
微笑んだ伊織がそう言うと、女はひきつれた目を見開いたように見えた。
「伊織……ごめんね、ありがとう」
声にならない声で、確かに女はそう口を動かして、薄黒く欠けた歯を見せて笑った。
「俺を救うって、あんた誰だよ?」
「アル、無理だよ。もう、息をするのも辛そうだぜ?」
それに伊織は、この場しのぎで言ったんじゃない。
虫の息であるこの女に、自身のアンテナを突き刺しているはずだ。
「わかった。ごめんな。楽にしてやるから」
懐から短剣を取り出す。
「……レ……ぃ……!」
その女は渾身の力を込めて、アルにすがるように抱きついた。
アルの衣服に女の体液が染みていく。
「……まだ頑張れるか?」
アルが優しく声をかけるも、女が動いた拍子にズルッと床に飛び出た内容物に次の句をなくす……。
伊織が横で、手で視界を半分隠しながら体勢をずらす。
もう無理だ。
敷かれた布団に吸われてよくわからなかったけど、出血はリッター単位。
意識だって限界。
「……ゆ…。……ユぅっ…ぁぃたかっ…たぁ…!」
潰れかけたノドからヒューヒューっと息が漏れる。
激しく強く、次第に弱く、また強く細く。
蒼白の伊織がしゃがんで、アルの背中に崩れる。
と、アルの瞳が一瞬大きくなった。
女の全身を一瞥し、目を細める。
「……俺もだよ……母さん。会えて、よかった」
女の後ろに回した凶器を、一息に突き立て引き裂いた。
