テキストサイズ

僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

アルの母親と思われる女性が息を引き取った後、大輔が合流して亡骸を保存、明日一番の火葬手配をする。

深夜2時過ぎ。
身を清め、棺を運んだリビングのソファでアルが寝息をたて始めたのを見計らって、伊織が動きだす。
大輔は片隅でうつらうつら舟をこいでいる。

俺は、音を立てないようにそっと出ていくあいつの後ろを追った。

「どこに行くんだ?」

ドアを閉め終えて、伊織の背中に問う。

「ろくでなしのとこ」

あぁ、やっぱり。

「やめとけよ。しかもこんな夜中に」

「昼間こそ取り合ってもらえないだろ?」

だからって、寝起きで気の立った親父相手にまともな会話ができるとは思えねぇ。
それもお前、喧嘩を売りに行くんだろ?

「柊兄は来なくていいよ」

と、止めていた足を進めだす。

俺がついて行かなきゃ、お前帰って来れねぇかもしれないだろ?

「行くよ……なぁ、アルを救うって何?親父さんがアルを消すわけないだろう?」

「そこを今、考えてる。外との接触を遮断された相手に、やりかねないと思わせるのは簡単だ。親父の息子は1人じゃないから。実際は俺に継がせる気はさらさらないのにな…」

伊織をダシにしたということか。
そうだな…女は会ったことがないにも関わらず、伊織の名前を知っている感じだった。
でもさ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ