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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

「そうだ。俺の優しさはお前が一番よく知ってるだろ?」

「俺を引き取ったこと?」

「お前の両親が隠れるから、探すのに苦労したよ。匿った家族も可哀想に巻き添えだ」

可哀想にと言いながら親父は口角を上げる。

「……わざとか?事故に見せかけて、殺したのか?」

「想像するのは自由だ」

「俺を引き込むために、周りを犠牲にしたのか?……なぜ、今それを明かす?」

「お前は優秀だ。己の立ち位置をよく理解している。…愛人の子。お前が生まれたせいで、アルは母親を、俺は最愛の妻をなくしたんだ」

「親父さん、それは伊織のせいでは」

たまりかねた俺が口を挟むと、「ん?」とすぐ様いやらしく微笑みが返ってくる。

「……いえ」

俺がうつむくと、親父は伊織への圧力を続けた。

「だけど俺たちはお前のこと、恨みもしないで逆に守ってる。誰が養育費を払ってる?お前の分もアルが汚れ仕事をやっていること忘れるな。お前と柊は2人揃って、アルの両翼だからな」

「もう、夜もふけた。寝かせろ」

本條がドアを開くと、俺たちは退出せざるを得なくなった。

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