テキストサイズ

僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

伊織は膝の上に組んで口を開く。
一言一言を絞り出すように。

「…ねぇ、柊兄。俺も…人質を、取られるのかな?…取る、としたら…誰だと、思う?」

「それは……」

伊織の親はもういねぇ。
実の父親は言わずと知れた。
認められた兄弟はアルのみ。

伊織の人質になるとしたら……。
一番に髪の長い美少女を思い浮かべる。
伊織も、そう思ってるはず…。

俺が過去に不用意に言ってしまった言葉が脳裏をかすめる。
"愛しの彼女ちゃんと離れたくねぇもんな"

俺、口軽いな…。
覆水盆に帰らず、あの彼女とは成就しなかったと言えば済まされるか…。
それでも伊織の片恋の相手として人質に取られるのか?

だけど、伊織は俺とは違う…。
それに、そんなことになったら今度こそアルが黙っちゃいない。

長い沈黙の後、伊織は顔を上げる。

「柊兄は、いつから取られてるの?」

「中学1年の終わり頃だったかな…」

あれは、小学生伊織がまだ俺たちと打ち解けていなかった頃。
アルと俺が伊織の才能を認めだした頃。

「俺が来てからだったんだ…」

伊織はそう呟いた後、くっと唇を噛んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ