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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

「あの昔に言っていた"姫を助ける"って、彩華さんのことだね?…俺が変なこと喋ったから…俺、大変なことをしてしまった…」

「謝るだけじゃ済まされない」とうつむく伊織の肩に、がしっと手を回す。

「違うんだ。あれで彩華さんは助かったんだよ。今も彩華さんが生きているのは、お前のおかげなんだ。本当にありがとう、礼が遅くなってごめん……悪ぃな。お前に言わなかったのは除け者にしようってハラじゃねぇ。巻き込みたくなかった。気休めかもしれねぇけど。

ただ、俺は裏切ろうとしたから取られたんだ。お前とはそこが全然違う。俺が彩華さんを助けようとしなかったら、こうはならなかった」

"お前は大丈夫だ"とそんな大風呂敷は広げられず、俺は伊織を安心させるようにせめて笑うしかできなかった。

「助けようとしたことが、裏切りだなんて…」

表情の暗いまま伊織は歯を食いしばり、拳を固めた。
あの日のアルと同じように。

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