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僕ら× 1st.

第13章 ク"ニコ"ム --Shu

執行当日は厚い雲におおわれた曇り。
まぁ、大雨じゃなけりゃいい。
終業式を終えた伊織は昨夜から出掛けている。

大輔に消防署まで自転車で行ってもらい、そのまま自宅からのフリをして電話をかけてもらう。

燃料の入った薄い鞄とライターを持ったアルが、屋根からバルコニーに降り立ち、3階ホールから見ている俺に手を挙げる。

決行だ。

サイレンが聞こえだし、炎が成長を始める。
壁に煤がつくが、まだまだ。

身軽になったアルは先程の屋根を乗り越え、廊下側へ消える。

先に到着したのは消防車。
よかった、救急車だったらまた帰されてたかもだからな…って、実際に火が見えてるのにそれはねぇか。

玄関のドアが開いて、小柴が何事かと外に出てきた。

火を見上げ、消防隊員と言葉を交わしている。

火の気のないはずのバルコニー。
ヤツは一瞬で放火に気づくだろう。

犯人にも……。

だからアルは無垢な伊織を外したんだ。

さぁ、俺も出よう……。

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