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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

宮石の話題で彼氏:伊織と花を咲かせるわけにもいかず、俺はこの夏の出来事を話す。

話題のニュース、見た映画、そして、どうしても彼女に関連した方面に移ってしまう。

「宮石のお兄さん、海外の大学なんだってな」

通りすぎたあの日の雨は、元々高い湿度を更に昇らせて。

「2番目のね」

立っているだけで肌にシャツが貼りつくほど、不快指数満点。

「そう。帰りに送ってもらったから。いろいろ聞いたんだ」

そして彼女たちが作った個性的なカレーは、匂いも味もそれはもう特級の甘さで…。

「ふうん。意外と話しやすいだろ?」

それでも、"お疲れ様"と嬉しそうに注いでくれる彼女の笑顔は格別で。

「うん。イケメンすぎて気後れしそうだったのに、いつの間にか馴染んじゃった。俺とお前と空気が似てるって言われたよ」

彼女の喜ぶ顔が見たくて列をなす男たちの、その想いに共感した。
その上で。

「空気?似てるかなぁ?」

自分の隣で、優しさをもってカレーを評する男と。
一緒に笑える自分に安心した。

「どうかな?」

初めて出会った彼女の2人の兄貴は俺の理想で。
"棚ぼた野郎"とこけ下ろされていた伊織のポジションが、更に輝く。

「俺の知る中で最強の1人なんだよ。帆澄兄に勝てるのは、花野だけ」

彼と彼女と、同じ鍋をつつく。

「え?宮石?何で?」

俺のグラスが空になりそうなのに気づいて、くだんの笑顔でドリンクを足してくれた。

「溺愛してるから」

彼と彼女は俺の友だち。

「伊織も溺愛されてるよ」

出会えた偶然を大切にしたい。
それが俺の持って生まれた強運。

「そう?」

たまに羨ましく思うかもしれないけれど。

「伊織のことも心配してたよ。"味方になってやってね"って言われた」

ずっと友だちでいような……。

「そうなんだ。晄志がいてくれると心強いよ。よろしくね」

こちらこそよろしく。
お前に出会えて、よかった。

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