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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

俺の目眩感に同情を見せる伊織が、再び話しだす。

「先生、俺は進路指導室でした約束をずっと守ってるよ。中学卒業するまで、あの誓いは有効だと思ってるから」

「はぁ?でも宮石に尋ねるわけにもいかないしな」

教師と交わした"誓い"……?
うん、何となくわかるけど。

「先生と晄志しかいないから言うけど」と伊織が言った。

「花野と俺は正式なカレカノじゃないんだよ」

は?

「正式じゃない?だったら何だよ?」

と根岸が返す。
そうだ、何だよ?

「つきあってるフリをしてる。じゃないと俺が止まれないから」

この言葉に、俺は根岸に代わって尋問を始める。

「フリ?手を繋いだり抱き締めたりが、フリ?」

「そうだよ。んー、去年あんな新聞が出回ったろ?だから、フリでいいからつきあってって頼んだんだ」

「何でまた?」

「家族として好かれてるだけだと思ってたから。キスも拒まれたし。…抱き締めるとかは抵抗が薄いんだ。小さい頃はそういう国にいたし。だからってお前はすんなよ?」

そりゃしないけどさ。

「だって宮石は…」

"お前のこと、好きだろ?"と視線で訴える。

「あの時はわからなかったんだ。俺とは幼馴染みの双子関係を崩したくないって感じに見えて」

それはわかるな。
すでに離れ難い関係を持っているからこそ、別れる可能性のある恋人にはなる必要もないっていう。

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