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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

「だからキスもしてないし、その…身体の関係も一切ない」

「マジかよ…」

俺と根岸はお互いに同じ言葉をぼそっと呟く。

全校一仲良く見えるこの2人が、偽りの恋人だったとは…。
まぁ、結局は両想いなんだから同じことだけど。

しばらく伊織を見ていた根岸だけど、ふっと笑ってこう言った。

「じゃ、このプリントの状態はお前の夢でしか実現してないんだ?」

「っ」

一瞬で耳まで真っ赤になってうつむいた伊織が、正直でとても可愛らしく見えた。

「お前もウブなとこあるんだな…」

思いがけなく純朴な伊織を目の当たりにして、根岸は笑いをこらえる。

「るせっ、いたいけな生徒をからかうなっ」

「だぁれが"いたいけ"だっ」

伊織が"いたいけ"?
約1年間、俺たちを欺いて宮石とつきあってるかのように振る舞っていた男が?
彼女に好意を持つ男を駆逐するための作戦なんだろ?

今なら、宮石が見せた数々の戸惑いの意味がわかる。
"本当は私たちつきあってないのに……"
そんな声が聞こえてきそうだった。

ホント、したたかだよ。

ただし、純粋。

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