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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

伊織の告白に気をよくした根岸は、「原稿ごと握りつぶす」と約束して、退出した。

2人になった部屋で、伊織は俺に頭を下げる。

「晄志、騙してごめん。俺、誰にも花野をとられたくないんだ」

「謝る必要ないよ。俺はその前からフラレてたし。宮石にはお前しかいないと思ってる。さっきのこと、誰にも言わないよ」

つきあっていようがいまいが、宮石の好きな男は伊織だから。

「ありがとう…俺、アル兄も欺いてるんだ。何か心苦しくて、お前には言えてよかった」

吉坂か…。
それは、まぁ辛いよな。
でもその道を選んだのはお前だし、じき、それは真実になる。

「…そうだな。いんじゃない?吉坂先パイはモテるから」

それだけ彼女を忘れられる可能性が高いってことだし。

「お前もモテるからいっか」

俺はモテないけど。

「俺には虹の思い出があるからな」

「俺にだってあるよ」

部屋の窓を閉めて帰り支度を始める。

「張り合うなよ。レベルが違う」

「質も量も俺の勝ち!」

子どもみたいにムキになる。

「それはどうかな?」

あの虹はあれっきり。
甲乙なんてつけられるはずもない、ふたつとない俺の宝物。

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