テキストサイズ

僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

~速水伊織side~

ある地方以外では、神様が居なくなる月。

生命力溢れる病み上がりの生徒たちは、順調に復帰しだした。

羽賀は入院するまでだったらしいが、その反動で動きたくて仕方ないと言う。
ハロウィンにちなんだ曲を希望するので、花野とデュオで"The Great Pumpkin Waltz"を。

「歌えないんですけど!」

「なければ作れば?」と言う僕の言葉を受けてピアノから手が挙がる。

「歌詞をつける時は、"かぼちゃ大王"を入れてほしいな」

このワルツが流れるアニメのキーワード。
花野にしては無理難題を吹っ掛けるが、羽賀は「やる価値あるかも」と前向きだった。

うん、そのワードを入れつつ、しっとり歌えばいけるかもな。

紅茶を淹れ始めた花野がニコニコと話す。

「ライナスって伊織君に似てるでしょ?」

え?あのかぼちゃ大王を信じる少年が僕?

ライナスは、このアニメの主人公である丸頭男子の友だち。
このコが持つ安心毛布は、心理学の用語になる程有名。

「あー、ジャガイモの様な頭だし?」

そこか?

「僕はあんな"バブーちゃん"じゃない」

主人公の妹から、そう呼ばれるライナス。
指しゃぶりはとっくに卒業したけれど、いったいどこが似てるっていうんだ?

「知的で夢見る少年なところが似てるの」

そう?それなら嬉しいな。

「花野。こいつはそんないいもんじゃないって。常に画策してる腹黒い男よ」

羽賀の僕に対する評価はそれか。
あながち間違っちゃいないけどね。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ