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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

花野に「ちょっと出てくる」と手を振り、外へ。

小柴和也…僕たち子どもの養育係で、あの隠れ家の持ち主。
親父の秘書、現ブレーンが僕を待っていた。

冷徹無比と称されるこの男だけど、僕はそうは思えなかった。
僕には静かな笑顔を見せてくれていたから。

濃いグレーのスーツを着てハンチング帽を目深にかぶった小柴さんは、「ついてきな」と歩きだす。

駐車場に停められたクルマに乗り込み、ドアを閉めて帽子を外すと、「ふうっ」と息を吐いた。

「誰にも聞かれたくなくてね」

「僕も小柴さんに伺いたいことが2つあるんだ」

僕を宮石家から連れ去った男。
この男なら知っているに違いない。
花野の辿る道も…。

「先にお前の話を聞こう。時間はなくなればまた作るよ。俺の話、長いんだよ」

手短に。
ならばこれで僕の意図することは見えるだろう。

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