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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

「教えてやるよ、俺の秘密…その前に、ほら。常温の水、身体にいいぞ?」

さほど健康を気にしている風でもないくせに、彼は足元の袋から取り出した500mlボトルを渡してくる。

「俺の行動がよかったかどうかなんて批評は要らないからな?結果論は易い」

お礼を言いながら、キャップを回して口をつける。
ぬるいっ…。
でも、その潤いはすぐに血管を巡り、体内に広がっていく気がした。

「…俺は婚外子でね、施設で育った。路地裏でやさぐれてた俺を、拾ってくれたのが先代だ」

シートを少し倒して、懐かしむかのように目を閉じる。

「先代がいなければ、俺は彼女とつきあうことさえできなかっただろうな。チンピラとお嬢様だぜ?」

遠い瞳を見せた彼は、自嘲とともにすぐに戻ってきた。

「25年程前に代が変わった時、親父から彼女を差し出せと言われて考えた。その当時の俺にはコネクションが乏しくて、やっと見えた活路だったんだ」

それからは、駆け抜けるように話しだす。
時折、僕が質問するための一息を空けながら。

言いたくない現実、過ぎ去ったのに未だとぐろを巻く。

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