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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

「もう結婚間近で、彼女の家族構成も把握されていて、逃げられないと悟った。
一旦足を踏み入れたら、ここ以外では生きられないとわかっていたし」と彼は続ける。

「彼女を騙して、ホルモン投与で育った卵子を20個程採取した。で、俺のとで受精させたんだ」

騙して?
何かの治療だと、医者と共謀したということか。

「避妊手術も。彼女が他のヤツの子を身籠るなんて耐え難かった。俺の子を産む時間も残されてなかったからな。それに、生まれた子どもを人質にしたくなかった」

解放された後も見越しての体外受精…。
そこまでの脅威が親父サイドにあるのか。
"差し出せ"ってそういう意味なのかっ……。

母親が彼女だとわかると、その子どもは小柴さんの弱点になる。
では、産む人間は別人…そのための体外受精。

「じゃあ、小柴さんの子どもがいるんだね」

だけどそれは随分前の事。
今は彼女を取り戻せた、ということだよね?
なのに僕の願望でしかない楽観的予測はすぐに覆る。

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