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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

「アルの母親が親父に刃を向けたのは、今年の8月だ。親父は気ままに彼女の元に通っていたからな。失敗に終わったのは残念。だけど、荷担したのが、益川だったんだ」

益川さん!
…僕にブレーンの仕事を教えてくれた1人。

5月末に相談を受けて、柊兄の姉2人を助けた彼。
柊兄たちには面倒な他人事であるかのように振る舞った彼だったが、3人が帰った後、夜を縫って診療部に根回しをしていたようだ。

だけど、僕が修学旅行から帰って来た時には、もうブレーンの籍を外していた。

いつか会えたら、お土産を渡そうと思っていたのに。

「俺の失態だ……」と小柴さんはうつむいた眉間をぐっと押さえた。

「ヤツは迷惑をかけまいとして俺から外れたんだろうな。でも、考慮はされなかった」

「俺が総責任者だ…高梁のご両親が……」

「2人とも?」

と、小柴さんは僕にスマホの画像を見せた。
僕は遠目に見るだけで目眩を覚える。

「益川と、俺の分だから2人だ。ただ、この画像を信頼できるかがわからない。特殊メイクでごまかすこともできる輩だし。実際に遺体は見てないし」

小柴さんは、この極めて非日常な画像を穴が開くほど分析したのだろう。

益川さんは当然、もう……。
僕にも小柴さんにも、誰にも相談しないで、1人で……。

でも花野の祖父母はもしかしてまだ…。
でも、あれ?
この部屋、どこかで……。

僕は断末魔の聞こえてきそうな画像をもう一度確認する。
これは…………っ‼‼

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