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僕ら× 1st.

第14章 P波 --Khs,Ior

「伊織君!どうしたの?」

僕が音楽室のドアを開けると、スマホを握りしめた花野がすぐに駆け寄ってきた。

「雨降った?」

僕の濡れている髪に気づいて鞄に戻り、ハンドタオルを出してきた。

その間にポケットから取り出した自分のスマホを覗く。

僕に連絡くれてたんだね…心配してくれて、ありがとう。

「花野。僕、今、幸せだよ」

「?何があったの?保健室行く?」

彼女は僕をソファに座らせて、優しく髪を拭いてくれる。

「うん、顔悪いよ」

「元からだよ。大丈夫」

羽賀は僕が突っ込まないので、それきり口をつぐんだ。

「…和波お兄ちゃん、呼ぶから送ってもらお?」

「そうだな…」

僕はひとりで大丈夫だけど、花野を送るのは…今、1対1で花野と接するのがきつい。

和波兄に連絡を取った花野は、隣に座って僕の両頬を手で挟む。

「温かいな」

じわりじわりとその温もりが入ってくる。
近い将来に僕の元から無くなる温度、しっかり覚えておこう。

花野の両手の上から自分の両手を重ね、目を閉じて頬の皮膚感覚に集中させた。

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