テキストサイズ

僕ら× 1st.

第15章 学校祭 --Ar,Shu,Ior

そこへ、マスター依田と女のコが袖から現れた。

脇のテーブルで片付けをしている2人に声をかけている。

伊織が自分のエプロン一式を渡し、渡されたマスターは首を横に振りながら隣の女のコに渡した。
……交替か。

花野ちゃんはそのまま奥に戻り、伊織はこちらに向かってくる。

「アル兄、柊兄。どう?おいしい?」

「ああ、うまい。チョコクッキーが余ったらくれな?」

「余らないよ。知ってるヤツは知ってるから…誰が作ったか」

なぁ、柊。
お前の考えてること、こいつに見透かされてんじゃねぇか?

「とか言って、お前もキープしてんだろ?」

「ふふっ」と笑って伊織は話す。

「この後、演劇部と合唱部合同のステージで彼女と演奏してくるんだ。ミュージカルなんだけど、気が向いたら覗いてね。じゃ、来てくれてありがとう」

また、花野ちゃんピアノが見られるのか…。

でも、サマフェスで初めて伊織と演奏しているのを見たけど…俺の手の届かない女のコなんだって再認識して苦しかった。

もっとあっさり失恋できるもんだと思ってたな。

とそこへ、エプロンを外した花野ちゃんがやって来る。

「お土産にどうぞ」と、黒比率の多いクッキーの詰め合わせ袋を俺たちそれぞれにくれた。

花野ちゃんの笑顔を見ることができたから。
伊織の兄で、これでよかったんだ……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ