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僕ら× 1st.

第15章 学校祭 --Ar,Shu,Ior

~本條柊side~

「ミュージカルか…」

伊織と彼女が出ていった後、アルが呟く。

ヤツに貰ったビラを眺める。

"美女と野獣"か…。

伊織はともかく、花野ちゃんって"ベル"タイプだよな。
本が好きで少し風変わりなところが…。

リビングでアルが、"円周率の楽譜"とか言いながら、数字やアルファベットを並べていた時は驚いた。
それらが音符になると言う…。

アルとそんな話で盛り上がれる花野ちゃんって、やっぱりあれで理系なんだと、だからこいつはなかなか彼女から抜け出せないんだと不思議に納得して。

あれは、相合傘から何週間か後の高校進学試験間際だったよな。
彼女に会う口実がほしいのはわかるけど、あえて今しなくてもいいのにって思ったもんだよ。

「…お前、行く?」

迷ってる風なアルが尋ねてきたので、俺は促す。

「そりゃ行かなきゃな?」

中等部最後の弟妹の晴れ舞台。
ピットクルーであっても、あの2人なら主役級に輝くだろう。

「お前、あまり俺で遊ぶなよ?」

この部屋に入ってから今まで寡黙だったアルは、息を吐いて緊張を取る。

「ん?大丈夫さ」

もうとっくの昔に、お前の気持ちは伊織にバレてるよ。

大丈夫さ。
この喫茶には伊織が呼んだんだから。

俺たちは2杯目のコーヒーを注ごうと来てくれたマコちゃんに、「ごちそうさま」と言って、体育館に向かった。

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