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僕ら× 1st.

第15章 学校祭 --Ar,Shu,Ior

観客がはけた頃に、アルは俺の隣にやって来た。

「可愛いコだったな」

舞踏会のお誘いだったんだろ?

「お前のストライクゾーンは広いな」

かったるそうにヤツは言う。

「お前が狭すぎるんだ…断ったのか?」

願ってもない新しい出会いのチャンスなのに。

「ふっ。向こうが引いたんだよ」

と嬉しそうに笑う。
あぁ、この反応…不吉でしかねぇよ…。

「…お前、何を言ったの?」

「別に、フツーの会話。"(a+b)2乗=a2乗+2ab+b2乗"の公式についてどう思うか聞いただけ」

え?え?えっ?
どこがフツー?
そんなの授業以外で使う?

「…それにどう答えりゃいいんだよ?」

こいつ、やっぱしワケわかんねぇ。

「"2乗の計算がシンプルに分解されて感動"って、花野ちゃんが」

花野ちゃんが判断基準かよ?
ああ、それが模範解答なわけだ。

「…はぁ?」

で、何が感動?
そんな公式はテスト前に丸暗記して、終わったら忘れるもんだろ?

「わかんね?」

「わかりたくもねぇ」

と言ったのに、アルは説明を始める。

「…62の2乗を求めたいとするだろ?

60と2の和の2乗だから、当てはめると3600+240+4で答は3844だ。簡単だろ?」

「……」

そんな得意気に言われても、さっぱわかんねぇ。

お前は女のコに何を求めてるんだ?
俺は逆に、答える花野ちゃんに引いちゃうよ。
ついてけねぇ。

まあ、女のコを傷つけない断り方を獲得したということか…。

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