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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

腹ごしらえの後、普通の映画を観て俺は、本日の課題クリアと一息つく。
パンフを鞄に入れた後の竹崎は、ご機嫌で俺の腕をつかむ。

「ホテルへゴー」

「行かないよ」

こいつはどこまで本気なんだろ?
そんなの俺以外の男の前で言うなよ?

あ、伊織も大丈夫だな。
今日も仲良く禁欲デートなんだろな。

「キョーミあるんでしょ?」

「あるけど行かない。帰るぞ」

初めてが竹崎だなんて俺、ちょっとでもヘマしたら一生涯ネタにされそう。
宮石にも聞かれて、恥さらしもいいとこだ。

「ヨーダ。私、ヤられちゃった」

暗くなりかけの空に歩きだすと、ボソッと呟く。

「お前はヤる方だろ?」

言ってからしまったと思った。
顔を上げた竹崎の目が濡れていたから。

「ヨーダにあげるはずだったヴァージンを無くしちゃった」

…くれる予定はなくていいんだけど。
いや、そんなこと言ってる場合じゃない。

「……被害届は?相手は誰?」

冗談じゃなくて?

「出したところで同じでしょ?"私、汚れました"って冷たい世間に公表するだけ。それに、ヤツが捕まったところで死刑になりはしない。すぐに出て来て繰り返すのよ」

マジで?

「汚されちゃいないよ。竹崎は気高いままだよ」

このシリアスな竹崎に俺は何を言ったらいい?

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