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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

冷気がじわじわと昇ってくる階段でリルが言った。

「マイガールになってほしい」

嬉しかったよ。
だけど、そんないきなりキスなんて、心の準備といいますか……。
だって、ヌイグルミにしかしたことないのに。
好きな人とするなんて、考えたこともないのに。

キスなんて無理!

今だって脚が震えて、立っているのがやっとなのに。

だってリルには両想いのコがいるでしょ?
いつの間にか心変わり?

リルが私を特別に好きだと言ってくれるなんて、青天のヘキレキで。
家族でいられたらそれでいいって、諦めていたリルへの窓が一息に開いて……。

全身の感覚が混乱する。
寒いのか暑いのかもごっちゃになって…。

足元が揺らいで、私は逆さまに立ってるんじゃないかって気までしてくる。
目の前が見えない、耳も聞こえない……。
私このまま階段から落っこちて、パンツ丸見えの醜態を晒しちゃうかもしれない。

それはダメよ!
せっかく好きって言われたのに、1時間後には嫌われちゃう!

どうしよう?
私は軽いパニックに陥って。

頭の中でかすみだしたボヤボヤを振り払おうと首を回して、平常を取り戻そうと息を吐く。

視界よりも聴覚の復活の方が早くて、その後のリルの台詞が途切れ途切れに入ってくる。

「つきあってるふりしよ?実際は妹で構わないから」

そう言われて戸惑った。

妹?
妹でよかったんだ……。
"マイガール"ってそういう意味?
"好き"ってやっぱりそういう種類?

落ち着け、私。
都合良く勘違いするとこよ。

だけど、何でもいい。
フリでも私はリルフィーについていきたくて、頷いた。

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