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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

***

小さな手提げ鞄に潜ませた伊織君へのチョコ。
今日の帰りに渡そう……。

そう思っていた昼休み、ペンケースの中に折り畳まれたメモ用紙に気づく。
いつから入ってたんだろ……。

開いてみると……。
『宮石先パイ、14日の昼休みに視聴覚室に来てください。待ってます。内記カンナ』

え?何だろう……知らないコ。
テディベアのコは転校していっちゃったし。
てか、急がなきゃ。

静かな視聴覚室に飛び込むと、ジャージ姿の女のコが立っていた。

「宮石先パイ、わざわざお呼びだてしてすみません」

息を切らした私を気遣ってくれる。

「あのっ、内記さん?ごめんね、遅くなって」

「いえ、来てくださっただけで嬉しいです。これ、貰ってくださいますか?あの、バレンタインのガトーショコラです」

可愛らしい笑顔で私にペーパーバックを差し出してくれる。

「ガトーショコラ?私、大好き!」

ケーキの中でも、一番大好きなケーキ。

「えへへ。ですよね?どうぞ。あの、宮石先パイのピアノ、大好きです」

「サマフェスでファンになっちゃって…ミーハーですみません」と、はにかむ姿に、私も照れてしまう。

「あ、ありがとう!」

「えっと、じゃ、私これで。すみません、次は体育の授業なので、お先に失礼しますっ」

内記さんはニコッと笑って部屋を後にした。
何か嬉しいな。
私もあんな風に爽やかに伊織君に渡せるといいな。

教室に戻ろうとすると、「来てくださったんですね!」と、ドキドキしていた私にかぶさるような女のコの声がした。

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