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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

~速水伊織side~

バレンタイン当日、呼び出されたのは視聴覚室前の廊下。
僕の姿が見えると、嬉しそうにはしゃぐ女:サセコ。
以前に僕の靴箱に手紙を置いた主。

文化祭の僕たちを見ただろう?
仲が良いほど、奪えれば快感だよな?

積極的なボディタッチ。
つけまつげをぱちくりさせて僕を見る。

その長い髪は花野の真似だろ…てか、エクステ?
知らないの?
僕はショートヘアの花野も大好きなんだよ?

色気を売りたいのか際どく外したブラウスで頭を下げる。
スカートも超ミニ。

何か勘違いしてないか?
そんなの魅力的でも何でもない。

中身に自信がない証拠。

あざといな。
僕を好きなわけでもないくせに。
ならば、利用するに何のためらいがいる?

ふと気づく。
視聴覚室のドアが少し開いている。
偶然か、それとも。

サセコと別れた後、廊下を逆戻り柱影で待つ。

こそっと出てきたのは、花野……。

もう、鈍くさいな。

遭遇したくない時に限っているんだから。

こんな形では知られたくなかったけれど、もう動くしかない。

最終授業のベルがきれるのを、こんなに呪ったのは、後にも先にもこの日だけだった。

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