テキストサイズ

僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

どこに行ったかはわからないけど、まだ校内にいる。
僕は靴箱の脇で彼女を待った。

そのうちに彼女が姿を現す。
ごめんね、泣かせてしまったね。

彼女の後ろを見つからないようについて行く。
ひとりで無事に帰れるか、心配で。
彼女と離れたくなくて。

電車内では指折り体操に意識を集中させている。
何の計算だろう?と思ったけれど、何度も繰り返し実践して理解する。

3-5-2-3 1-5-2-3 4-5-10-2-1-9-4……。

目の回りに停滞していた涙が引いたんだ。

駅前通りを進み、寄り道もせずにポプラ並木通りから自宅の門をくぐる彼女を見つめる。

僕が後ろにいると思いもしない。
彼女は一度も、振り返らない。

ねぇ、ひとりでも…僕がいなくても大丈夫?

そんなの寂しいから、僕はキミを守り続ける。

彼女の家の前で立ちすくみ、夜空高くに双子座が輝くまでそこで過ごした。

凍えた指先の感覚がなくなっても、キミの灯火を見つめていたかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ