
僕ら× 1st.
第16章 Lost --Khs,Ior,Kn
***
家に戻った僕は、ドアの隙間から明かりの漏れるリビングには立ち寄らずに静かに通り過ぎる。
自室で彼女から貰った紙袋をそっと机に置いて座る。
何分か見つめていた。
手渡してくれた彼女の表情を、その震える手を思い出しながら。
紙袋の中に箱がひとつ。
細いリボンをほどいて封をあけると、甘い香りが漂った。
丁寧に紙に包まれたチョコの上に、白いメッセージカード……。
『伊織君へ
だいすき
花野』
彼女からは、今まで毎年貰っていた。
留学していた時だって、郵送してくれた。
でも、今まで一度も言葉を添えたことなんてなかったのに。
僕が言わなければ、自分からは言ってくれなかったキミなのにっ。
「花野っ、花野っ!僕もっ、僕も好きっ!僕もっ、花野を好きなんだ!……こんなにもっ」
そのカードに、チョコに語りかける。
「大好きだよ……フラウリィっ」
決して届かないとわかっているのに。
家に戻った僕は、ドアの隙間から明かりの漏れるリビングには立ち寄らずに静かに通り過ぎる。
自室で彼女から貰った紙袋をそっと机に置いて座る。
何分か見つめていた。
手渡してくれた彼女の表情を、その震える手を思い出しながら。
紙袋の中に箱がひとつ。
細いリボンをほどいて封をあけると、甘い香りが漂った。
丁寧に紙に包まれたチョコの上に、白いメッセージカード……。
『伊織君へ
だいすき
花野』
彼女からは、今まで毎年貰っていた。
留学していた時だって、郵送してくれた。
でも、今まで一度も言葉を添えたことなんてなかったのに。
僕が言わなければ、自分からは言ってくれなかったキミなのにっ。
「花野っ、花野っ!僕もっ、僕も好きっ!僕もっ、花野を好きなんだ!……こんなにもっ」
そのカードに、チョコに語りかける。
「大好きだよ……フラウリィっ」
決して届かないとわかっているのに。
