テキストサイズ

僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

教室には既に、渦中の男が自分の席に座って腕を組んでいた。
一点をじっと見つめて、朝から妙な雰囲気を醸し出している。

「伊織。変な噂が流れてるんだけど」

ヤツの机の横に座り込み、表情を窺おうとしていたら、後ろから飛び込んできた激しい剣幕の女に発言権を奪われた。

「速水!ちょっと顔貸しなさいよ!」

伊織の机に両手をバンッと置き、突っかかる。

「貸さない」

そのまま視線をずらさずに淡々と応じる。

「あの2年があんたの彼女になったって自慢しまくってんのよ!」

「あー、仕方ないな。事実だし」

み、認めた?

「何をしようと俺の勝手。俺の人生」

そういうわけにはいかない。
つきあうってことは、相手がいるんだから。

「宮石は?」

「知ってるよ。何の問題もない」

問題、大アリだろ?

「どういうこと?」

伊織のテンションの低さに、小津も首を傾げる。

「どうって別に。バレンタインに告られたから」

2学期の始めには鼻で笑って相手にしていなかったのに。

「花野がいるのに?花野にも貰ったんでしょ?」

「貰ったよ」

どういう心境の変化だ?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ