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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

何が起きたのかさっぱりわからない。

宮石の様子を見に行こうと、俺は教室を出た。
F組前で滝沢と共に立つ小津に、尋ねる。

「宮石、どうしてる?」

「どうって、今はそっとしておいた方がいいかも」

猪突猛進な小津が、ひるむなんて…。
小津の視線の先を追う。

本を読んでいる…いつもの宮石?

「宮石」

近づいて呼んでみたはいいものの、何を話せばいいのかわからない。

「依田君、おはよう」

一瞬目があった。
けど、次の瞬間に彼女は遠い目をした。

「依田君も………今は元気?」

今は?
宮石の意図することがわからなかった。

「元気だよ」

「よかった」

と彼女は寂しげに唇を軽く噛む。

"よかった"って思ってる風には見えないんだけど……。

「あの……伊織君も元気?」

宮石は中身不在風の瞳で俺を見る。

ここは、ウソをついても仕方がない。
俺は先程の伊織について表現を抑えながら伝えた。

「…えっと、あいつはいつもと雰囲気が違う。元気はあまりないかも」

「そう……どうしたのかな?」

どうした?って、それは、宮石がよく知ってるんじゃないんだろうか。

伊織はキミと別れて落ち込んでる。
そうとしか思えないよ…。

なのに、この宮石。
"宮石からサヨナラしたけど噂は反転した"ではない様子。

「うん、また聞いてみるよ」

そう言った俺の目をぐっと覗いてくる。
悲しみをたたえた瞳を閉じて、軽く頭を振る。

泣きたいのを我慢して、いるんだろうな。
呟くように宮石は話して視線を落とした。

「…いいな、依田君は…。私も伊織君と友だちに戻りたいな」

「大丈夫だよ。今も宮石は伊織の大切な存在だよ」

伊織のあの態度からしても、これは当たっていると思う。
ただ、彼女という言葉は選べなくて…。

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