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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

とそこへ、新聞部の男が現れて彼女に近づく。

「宮石ちゃん。速水と別れたって本当?」

「おい!クズ野郎、やめろよ!」

そんなストレートに聞くなよ!
俺は足を踏み出して彼女の前に立ちはだかる。

「否定すればいい話だろ?本当は逆なんだろ?速水がフラレたんだろ?」

俺も初めはそう思ったよ。
だけど、違うんだ。
きっと噂通りなんだよっ。

「なぁ、もう俺ら卒業だろ?今更、取り沙汰すんなよ」

「お前に聞いてねーよ。な、宮石ちゃん?」

サイドから宮石に声をかけるので、俺も振り向く…彼女が顔を上げる。
口の端だけで笑う。

「本当…というか、偽物?」

もともとつきあってなかったんだもんな…。
俺は不用意に口を挟めずに2人のやり取りを見守った。

「偽物って?」

「偽物の証明?私であることすら危ういのに」

首を傾けて新聞部の顔をじっと見つめるので、ヤツも動揺しだす。

「いや、証明までは要らないけど」

「信じるしかないのよ」

宮石の口角が更に上がる。

「何を?」

「万物の存在。マルチバースがあったってなくったって、私はいいの。手のひらにちょっと余るくらいがちょうどいい」

何か壮大な話になってきたけど…。

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