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「花野ちゃん！おはようっ！」

ハアハアと息を切らしながら、彼女の机に取りつく。
高等部から走ってきたのか。

「吉坂先パイ、おはようございます。どうされました？」

「久しぶりに、会いたかった」

彼は彼女の顔を覗き込む。
ストレートに言う男だなぁ。

突然に現れた吉坂にもあまり驚いた表情を見せなかった彼女だったけれど、その瞬間で瞳が柔らかく笑いだす。

「先パイ、ありがとうございます。私も先パイに会えて嬉しいです」

と、新聞部が俺に説明を求める。

「宮石ちゃんと吉坂アル？」

自分の名前を出されて、吉坂は俺の後ろに立つ男をキロッと睨んだ。

「何？」

「いえ…、お2人はいつから？」

「お前、誰？…あ、マスター依田じゃねぇか」

吉坂は俺を見て「よっ」と片手を上げる。
俺、この人と知り合いでも何でもないんだけど。
あまりに有名すぎて、そして同じ女のコを好きな男として知っているだけなのに。

で、"マスター依田"って…呼ばれてんの？俺。
何で？

でもこの男、噂ほどは鬼畜じゃなさそう…。

「こいつは新聞部ですよ。今、反省中なんです、な？」

吉坂は俺の簡単な説明に「ふうん」と納得して、宮石に向き直る。

「でも、スクープ？」

一方で新聞部男は2人に向かって人差し指を泳がす。

「お前、大概にしとけ？高校に入ったらサッカー部に来いよ？その根性ならレギュラー取れるかもよ？」

俺は新聞部を連れて、その教室を出た。

宮石が笑った……吉坂が彼女に笑顔をもたらした。
"会いたかった"その一言で。

それがショックだった……。