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僕ら× 1st.

第16章 Lost --Khs,Ior,Kn

帰宅すると同時につけていたテレビの画面、"行方不明者:速水伊織(15)"に目を疑う。

同姓同名か?
年齢まで同じなのに?

居ても立ってもいられず、宮石の家へ自転車を飛ばす。

玄関のベルを鳴らすと、和波さんが俺を通してくれた。
そこには宮石と小津がいた。
以前俺たちが鍋を楽しんだリビング。

「情報が少なくて、あっちの兄貴も戸惑っててな」

「本当のことなんですか?」

和波さんと俺が話し込む横で、カチカチと宮石がオルゴールのネジをまわした。
テーブルに置くと、聞き覚えのある曲を奏でて回りだす。

「辛いね、花野……」

水の中に雪が降る。
その様子をじっと見つめる。

「大丈夫よ、私は」

そんな血の気の失せた顔で言うなよ。

「伊織は何であの船に乗ってたんでしょうか?」

俺は和波さんに問う。

ここから遠く離れた海外。
そんなところに何をしに?

「乗客名簿見てないの?…あのビッチとだなんて最低!あの下半身ゲス野郎っ!」

小津が口汚く罵る。

「え?伊織が?」

「積極的な年下彼女と卒業旅行ですって?ざまあみろよね」

卒業旅行?
卒業式は明日なのに。

「……俺は、何かの間違いだと思う。伊織がそんなことするわけない」

「そうだな。らしくない」

俺の意見に和波さんも同意する。

「どっちにしたって、もういないんじゃあ。あのエロクズ男」

怒りを露にする小津はバンっとテーブルを叩いた後、ドスドスっと音をたてて歩き回る。

それに対して宮石が、力なくこう言った……。

「伊織君は生きてるよ。最後まで諦める人じゃない。好きな人と一緒なら尚更…生きてる」

その後、彼女の死亡は確認されたが、伊織は依然として不明だった。

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