テキストサイズ

僕ら× 1st.

第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk

これから高校生活を過ごすクラスがわかり、それぞれが教室へ入り出した頃、静かな足取りで吉坂がやって来た。

上級生は本日休みだろ?
って、気になって仕方なかったんだな…。

「花野、ちゃん?」

声をかけ振り向いた彼女を、吉坂は数秒見つめた。

「あ、吉坂先パイ。おはようございます」

「ちゃんと食ってる?」

宮石の短い髪に手を伸ばそうとし、躊躇する。

「あは。こちらの依田君にも聞かれました。先パイもおやつ、どうですか?」

子どもみたいに宮石はニッコリした。

「じゃ、かえっこ。ほら、チョコ」

肩に掛けていたバッグから包みを取り出した。

へぇ、わりと気のつくヤツなんだな。
俺も持ってきたらよかったな…。

「わぁ、ありがとうございます」

宮石からグミを受け取り、口に含む。
それだけでセクシーなのはなぜだろう?

唇の動きだけじゃなく、その視線や手の運び方、その角度や速度も関係するんだろうなと、俺はぼんやりと考えた。

「入学おめでと。じゃ、あとで」

宮石の頭にポンと手をやって、ヤツは校舎に入っていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ