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僕ら× 1st.

第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk

「ごめん。泣かすつもりじゃ、なかった」

気が急いて、彼女の気持ちを置き去りにしてしまったな。
俺が、泣かせてしまった…。
でも、これは絶対に花野ちゃん宛なのに。

「大丈夫、力になれなくてすみません」

拭う彼女の横で、マスターが何事かと見ている。

「ホントごめんな」

真実はどうあれ俺、花野ちゃんを喜ばせた直後に突き落としたんだ……。

俺がぐっと頭を下げると、「ホント大丈夫です」と髪をツンとひっぱられ。
顔を上げると、彼女は涙を止めた瞳でニッコリと笑った。

「花野ちゃん、第2音行こ。俺、ピアノ聴きたくなった」

箱をしまうと、俺は彼女の手を引いてあの懐かしい空間へ足を進めた。

このままの気持ちで家に帰したくなかったから。
春休みをしのいだ俺が、いたたまれなかったから。

「鍵、あるんですか?」

「あるよ」

こっそり作ったマスターキーがね。
ペロッと俺は内々で舌を出した。

彼女と手を繋いだ。
彼女は振りほどかないでついてきてくれる。

俺は繋ぐ手に、力を込めた。

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