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僕ら× 1st.

第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk

飛びはねるような、きざみきざみの小さな声。
短く終わったので尋ねる。

「それは何の曲?」

「"口笛吹きと犬"、小学校の掃除の時間に流れてたんです」

「へぇ。花野ちゃん、口笛鳴らせる?」

「できますよ?」

彼女は今度は、そのメロディのさわりを口笛で吹く。

「おぉ、曲になってる」

というよりも、唇をとがらせて俺を覗き見るその表情が…。
初めて見るその表情が…。
そして、吹き終えたあとの恥ずかしそうな表情が…。

俺がホウキを動かしながら保存していると。

「先パイの掃除の音楽はどんなのですか?」

…掃除の音楽?
俺の?って、みんなそれぞれにあるものなのか?

中学までは教室の掃除当番とかあったけど、高校からなくなったしなぁ。
家を掃除する時も、ちゃっちゃと片してラボで遊ぼうとしか考えてねぇし。

ま、思いつくものとしては…。

「音楽というか、何かの語呂合わせを繰り返してたりするかな…」

「え?どんなのですか?」

どんなのって、誰かの考えた語呂合わせって女のコに言えないのが多いんだよな。
えっと、大丈夫なやつは……。

「"リアカーなきK村、動力借るとするもくれない馬力"とか…炎色反応なんだけど」

目を丸めたあと、ケタケタと笑い出す花野ちゃんに、ツボがよくわからない俺もつられて笑った。

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