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僕ら× 1st.

第3章 2人の証 --Ior,Hzm

最近の寝起きは何かが立ちこめる。
いったい僕はどんな夢をみてるんだ?

と思いつつ。
家ではいつものように本を読んで過ごす。

「伊織、いるか?…何だ、この部屋は…」

梅雨が明けるか明けないかの七夕の頃、久しぶりに親父が僕たちのたむろするリビングに顔を出した。
難しい顔をしながら部屋を見渡している。

アル兄は親父の行動を目のはしに入れながらも、液晶モニターの改造に取りかかっており、柊兄はやっぱりスマホ画面を操作している。

親父は、本を膝に置いた僕の前に、腰をおろして話しだす。

「えっ?留学?僕が?」

「お前はまだだったなと思って」

アル兄と柊兄は、僕がこの家に迎えいれられる前に済ませている。
優秀な2人は多国語を操り、この家の闇を熟知している。
両親を亡くすまで、親父の存在さえ知らなかった僕は、出遅れてるといえばそれまでだ。
それでも…。

「僕、いいよ。行かない」

「愛しの彼女ちゃんと離れたくねぇもんな」

「お前、彼女いんのか?」

「そういうわけじゃないけど」

柊兄の言うとおり、真っ先に彼女の顔が浮かんだ。
同好会も軌道に乗りつつあるのに…僕が抜けたら、彼女がひとりになる。

「夏休みから1年間、ルウイのもとで学べ。幹部目指すなら必須だ」

「必須……」

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