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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

~本條柊side~

伊織が消えた春休み。
アルは落ち着かず拳で机をコツコツ叩いたり、頭を抱え込んだり。
食事もままならず、大好きな機械いじりもおあずけで。

伊織のことを憂う花野ちゃんを想って。

すげえな。
他人の心なんて無関心に近かったアルが、花野ちゃんを案じて憔悴するなんて。

個室に閉じこもったアル。
リビングにいても仕方のない俺も自室に入る。

PCのモニターに映る事故付近の海図を眺める。
潮流が入り組んで渦を巻く魔の海域。

調べてわかったこと。
あの犠牲者…揃いも揃ってヤバいヤツばっかりだった。
前科者だったり、お尋ね者だったり。
少しだけ詳しくすると、飲酒運転で人身事故を起こしたり、人を死に追い込んだ詐欺師や強姦魔であったり。

乗り込んだら助からないノアの方舟逆バージョンみたいな。
あの伊織なら充分考えそうだ。

いや、ものすごく伊織らしい。

この時点で俺は、ヤツの生存を気にし始めた。

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