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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

思い起こすのは彩華さんの話を知った後の、震える声。

"人質を取るとしたら誰だと思う?"

当時は、杞憂だと思っていた。
なのに。

"俺は俺のやり方で花野を守る"

涙後の、伊織の決意が俺の胸に突き刺さる。

伊織……、親父たちに人質を要求されたのか?
だから、彼女から離れて別の女と……。

この事故は偶然じゃないよな?
死んだと見せかけて、何かをしようとしている?
一体、何を?

でも俺の灰色でもない小さな脳細胞に浮かんだだけのこと。
アルにはまだ知らせていない。

フリーになった花野ちゃんを想うアルに、足枷は着けたくねぇ。
アルが二の足を踏んでるうちに、他の男にさらわれるなんて、2人ともやるせねぇだろう。

事故前に花野ちゃんを手放した伊織も、覚悟の上のはず。

この選択が吉とでるか凶とでるか……。

策略家伊織。

あの事故はお前が起こしたんだろ?
これが彼女を守る術なんだな?

だけどお前、どこかでひとりで泣いてるんじゃねぇのか?
こんな辛い別れに耐えられるのか?

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