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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

時間が開いて、7月。

小柴の仕事部屋には、新入りの若い男が1人。
PCに視線を向けつつ、俺たちを窺っている。

俺のもつ情報、あの事故の犠牲者リスト…。
伊織が仕組んだのなら、不用意に口外できねぇ。
ヤツが生きていると知れれば、ヤバイことになる可能性は否めねぇんだ。

アルが伊織に贈った犬と、追跡機を手に一旦南棟に戻る。

2つの戦利品の調査のため、アルが個室に入ったのを確認して、再び俺は小柴の元へ急いだ。

「小柴さんは伊織の味方だよな?」

俺の持つ情報は伏せたまま、問いかける。

「俺は俺の味方。危なくなれば、お前らだって容赦なく切る」

果たしてそうだろうか?

小柴は信頼できるんじゃねぇか?
伊織はこいつを信頼したんじゃねぇか?

でも、根拠は俺の勘にすぎねぇ。
伊織なら証拠をそろえて、小うるさいほどの客観的な説明をしてくれるだろうけど。

伊織に人質提供の報せを伝えたのは、あんただろ?
手遅れになる前に、伊織を…花野ちゃんを助けたんだろ?
親父らの網をかいくぐって、伊織は生きてるんだろ?
今も伊織と連絡を取り合ってるんだろ?

投げかけたって、はぐらかされるのは目に見えている。

「俺らでできることなら、いつでも声をかけてくれって伊織に伝えて」

小柴は長く息を吐いた後、苦い顔で小さく首を横に振った。

「ヤツの動向は探らせてる。キミらは動くな。ヤツの件でキミらまで危険な目にあったら、俺がどやされる。何かあれば知らせてくれ。こっちからも知らせる」

「う、ん」

こいつの言うことはごもっともだ…。
どうみても俺は力不足。

「あ、それとな。アルのPC、親父に見張られてるから」

「えっ?」

そういえば、リビングにあったPCがわざわざクリプレとして贈られてきたよな。
あれか……。

はぁ、この男の考えていることがわかるようになる日が来るのだろうか?
真相の深くは雲に隠れたまま。

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