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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

***

用事のない休日は大抵図書館。
もしかして伊織君がひょっこり帰って来てるかもとかいう淡い期待を持って。

思い込みで自分を騙して、伊織君を待ち望む。
彼の生存を、未だ上がらない彼に一縷の思いをかける。

伊織君とよく行っていた図書館。
先日、司書さんにお願いして伊織君の図書カードの写しをいただいた。

彼がどんな本を好んで読んでいたのか、だいたいは知っているけど、伊織君の足跡を辿りたくて。

そんなことしか私は思いつかなくて。

そして最近になって、図書館に通うもうひとつの理由ができた。

たまに会う男の人。
初めて後ろ姿を見かけた時、伊織君かと思ってドキッとした。
伊織君のような癖っ毛じゃないけれど。
本を読んでいる、首の角度やページのめくり方。
そんなに特徴的なわけでもなく、どこが?と聞かれたら説明はできないけど…。

こないだそっと横顔を覗いてみたけど、やっぱり彼ではなかった。
伊織君より年上の、大人の男の人。

今日も会えるかな……。
この辺にお住まいなのかな。
何をされてる方なのかな。

でも本当は、伊織君……。
会いたくて会いたくて、千々に乱れる夜があるよ…。

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