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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

***

「これ、落としたよ?」

いきなり後ろから声をかけられてびっくりした。
今日は、あの人と対面席だったなぁと、少し浸りながら帰り道を歩きかけていたから。

あ、あの伊織君っぽい雰囲気の人っ!

彼は私に図書カードを差し出した。

やだ、私ったら大切なカード、無くすとこだった!

「え…。あ、すみません。ありがとうございますっ」

「キミ、よくここで見かけるね。古典物語、好きなの?」

「は、はい」

好きは好き…。
でもその図書カードは私のセレクトじゃないけど。

「ふふ。俺も、好き」

その笑顔がやっぱり、伊織君を彷彿とさせて……。
どうしてなんだろう?
顔は全然違うのに。

涙が、出た。

「えっ、あ。ごめん。俺、えと…」

彼はハンカチを出してくれる。

「あ、大丈夫です」

いけないっ、突然で油断しちゃった。

「どうぞ使って。あ、ちょっとここ座って待ってて」

そう言ってさっと向きを変え、小走りに消えていく。

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