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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

暫くのち、足音がして顔をあげると、紅茶の缶を持って彼は私に微笑む。
自分はコーヒーの缶を開けて、「乾杯っ」と促した。

「あ、ごめんね。紅茶でいい?なんて聞いたら遠慮されると思って…。紅茶でよかった?」

「はいっ、ありがとうございます」

その人は、左手首にリストバンドをしていた。
テニスプレーヤーみたい。

「笑ってる方が可愛いよ」

「あっは」

このもの言いに、この間の取り方。
やっぱりこの人、伊織君みたい…。

「ホントだよ。どうしたの?」

「すみません。何となく、私の知ってる男のコに似てたんです」

何気なくその人の缶を持つ手を見つめる。
長い指、ドラム叩けるのかな?

「俺が?……そっか。似てるかぁ」

私がじっと指を見つめるので、恥ずかしいのかぎゅっとグーにされた。

「笑顔なんてそっくりです。今、どうしてるかわからなくて。彼が大人になったら、そんな感じかなぁって思ったら涙が出ちゃいました…驚かせてすみません」

「こんな?」

ニシッと笑ってみせてくれる。

「はいっ」

八重歯が覗く伊織君の笑い方、私を元気にしてくれる伊織君の笑顔。

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