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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

「先パイ、じゃ私はあっち探してきます」

図書カードの順番でいくと、今日は"日本国現報善悪霊異記 上中下"。
もうタイトルからして怪しさ満載なんですけど!

伊織君は日本が好きだったもんなぁ。
先パイと別れて、地下の海外古典文学書庫に入り、背表紙を探す。

薄暗い書庫内の棚は、上から下までびっしりと古そうな蔵書が並んで、まるで別世界。

「…何を探してるの?」

その重厚感に圧倒されていると、背後に気配が漂って、"はっ"と息をのんだ。

この声……伊織君?

私の後ろに伊織君がいる?
いつの間に?
もしかしちゃって生き霊?

ここでずっと本を読んでいたの?

違う違う!
本物の声だよ!本当に聞こえたもの!

私が振り向いても、消えたりしない?
どこかに鏡は…あるわけないか。

必死に耳を澄ましても、高鳴る鼓動のせいで、静まり返った室内のわずかな音なんて消えてしまう。

伊織君、やっぱり生きていたんだね?
伊織君、戻ってきてくれたんだね?

ねぇ、もう一度、声を聞かせて?

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