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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

涙目の私に「そらっ」と、ハンカチを貸してくれた…というか、顔に押しつけられた…。

「ありがとうございます」

先パイでもハンカチを持ってるんだなぁと、失礼なことを思ってしまった。
だって、手を洗った後、ぱっぱと水を飛ばして歩いてたとこ何回か見てるし。

「歩いて来たんだろ?家まで送るから、メシ食いに行こ?」

そんな私の心を知らず、ニシッと笑いながら心配してくれる先パイ…。

「すみません。おうちでお昼ごはんの用意、してくれていると思うので…また、いつかの機会にご一緒させてください」

「そか、いつか必ずな。じゃあ今日は送るから」

「え?でも、近いから。それに雨ですし」

それに、彼がまだ現れるかもしれないし…。

「家の前でさらわれた女のコだっているんだぞ?こぉんな雨で視界悪ぃのに。叫んだってかき消されて聞こえねぇんだからなっ?

路肩にワゴン停めてさ、男2~3人に担ぎ上げられて拉致られるんだぞ?そんなことになったら俺、自分を責めちゃうだろ?」

この平和な町で昼中に?とは思うけど、こう脅されては、一応の女子としては首を縦に振らないわけにはいかない。

「…では、よろしくお願いします」

と頭を下げると、先パイは「よしっ」と笑った。

2人で階段を昇り、貸出しカウンターでチェックを済ませる。

吉坂先パイと歩く小雨の帰り道。
私と喋りながら歩く先パイは、大きな水溜まりに思いっきりスニーカーの足を突っ込んで「うわっ」と叫んだ。
ふふ……意外っ。

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