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僕ら× 1st.

第18章 雲の中 --Shu,Kn

***

7月夏休みに差し掛かろうというところ。
いつものように図書館へ。
今日は会えるかな?って少しワクワクしながら。

「や、花野ちゃん」

私が玄関に入っていくと、彼はロビーから立ち上がった。
今日は早いのね…。
私も、もっと早くに家を出たらよかったな。

「おはようございます!このあいだはご馳走になって、ハンカチまでお借りしちゃって、どうもありがとうございました!」

「元気だね。会えてよかった。俺、今日から海外に出ることになったから」

今日から?
もう?

「えっ、そうなんですか……」

夏休みの旅行かな?
そんなのでわざわざ挨拶しないよね。
いや、挨拶するためにいらしたんじゃないだろうけど、でも。
じゃあ、お別れ……。

そんなぁ……。

「よかった。寂しがってくれて」

ニシッと笑う姿がまた、伊織君と重なってしまう。

「ホント寂しいです。あのっ、お名前教えてください」

そう、ずっと聞きたくて、聞けなくて。
でも、この際だから聞いてしまおう!

旅の恥はかき捨てっていうじゃない?
あれ?
旅をしている人が言う台詞だっけ?

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