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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

***

年が近いせいかすぐに打ち解けたリィ兄に剣道を習うことになり、俺たちは毎日竹刀を交わした。
リィ兄は"実戦で勝たなきゃ意味がない"と空手混じりに振り回すからたちが悪いけど、楽しかった。

7月に入って少しの頃、父さんの事務所に訪ねてきた学生2人。
"本部お墨付きの情報部"らしい。
PCを見つめながらも意識を彼らにつける。

この春、海に消えた総帥次男の情報を求めて、父さんの反応をじっと窺う。
その後、退出しかけた背中に父さんが問う。

「アル、あの女のコどうしてる?」

アル?ってことは、こいつは…。

「誰?」

「お前の…現在進行形の片想い?」

そう言われて彼はむせこむ。

「そんなの小柴さんに関係ねぇだろ?」

顔を赤くして反発する。
この男が片想いか…。

「今、フリーなんだろ?」

「…自由じゃねぇよ。まだ繋がれてる。精一杯無理して笑ってさ、痛々しくって見てらんねぇよ。

なぁ、あいつを忘れさせてやるにはどうしたらいい?俺、あんなに悲しい音、聴きたくねぇよ!あのドアホはどこで何してんだよ?」

彼女は失恋中か?
ならつけ入るチャンスだろ?

「俺が知るかよ。忘れようとしたら、かえって忘れられないもんだろ?これ、やる。俺が持ってても仕方ないし」

と、父さんは引き出しから取り出したモニターを箱にいれて彼に渡す。

「?これ、俺があげたやつか」

「なら使い方はわかるな」

「わかるけど…この発信器知らね?」

「知らね」

「ふうん」と彼はそれを受け取って立ち去った。

横に控える男は終止喋らなかった。
きっとあいつは護衛の本條柊。
新入りの俺は鋭い視線を注がれて痛かった。

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