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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

その後、父さんが言う。

「まだだ。柊が戻ってくる」

「え?さっきの?どうして?」

「アルの親友だから」

それじゃわからないよ。
詳しく尋ねようと思っていたら予言通り、一度は退散した護衛役が舞い戻ってきた。

二三言葉を残していく。

なぜ、さっき言わなかった?

次期総帥が怖いのか?
親友なんだろ?

「伊織に伝えて」って、その男は死んだんだろ?

なぜ、父さんにそんなこと言う?

彼が去った後、奥に控えていたリィ兄が戻ってきて、事務所は異様な空気が流れた。
何だ?
どうして父さんも、リィ兄も沈黙している?

「次期総帥:吉坂侑生と本條柊。あの2人が将来の?」

耐えられなくて呟いた。

「なかなかいい男だろ?」

よかった。
父さんはいつも通りだ。

「イケメンすぎて腹立ちます」

顔立ちよく家柄よく、あれでスポーツマンだったら殺意が芽生える。

「ははっ」とリィ兄が乾いた笑いを放って、一応ホッとした。

「リィ兄だって、その無精ヒゲ取ったらそれなりにモテそうなのに」

と言うとまた乾く。

「あっは。この顔じゃね、ダメなんだな」

不思議なリィ兄。
悲しげな瞳に、どことなく優雅が漂う。
零落した坊っちゃん、な感じ。

「あの人、ああ見えて片想いなんですね。俺、びっくりしましたよ。どんな女のコだろ、あの男前を振るなんて」

「その女のコの好きな男は、男も惚れる男前だからな」

「へぇ、まさか父さんですか?」

「だったら俺、刺されるよ…」

「または毒殺…」
そう言ったリィ兄がニシッと笑うと。

「おい…お前が言うとシャレにならん」
と、父さんは困ったように笑った。

父さん、リィ兄のこと本当に気に入ってるんだな。
俺もこれから頑張ろう。

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